最小限住宅の先輩たち
「9坪ハウス」が現代の最小限住宅の一つの形ですけれど、古くは隠者と呼ぶべき者たちが暮らす小屋はその究極のありようでして、ちょっと整理してみました。
随筆「方丈記」の著者、鴨長明の住か。
大きさはその名の通り「方丈」=10尺x10尺の平屋。(5.6帖)
実は、なにげなく、フェイスブックの写真アルバムにて、鴨長明の「方丈」の写真をアップしていたんですね。「京都建築巡礼」の中に下鴨神社の境内にある摂社の河合神社に、「方丈」が復元され見学できます。
神官の登用試験に落ちて挫折し、隠遁生活へ。
「行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。」(方丈記より)
五合庵
越後の聖人 良寛和尚は、 新潟県人に今も広く愛されております。
良寛の住んだ五合庵の大きさは =2間x9尺(6帖)+厨 です。鴨長明に負けずに極小の小屋です。五合庵の歴史を調べてみると、良寛和尚は築100年を経た老朽化した小屋を40歳くらいから住処にしていたとのこと。良寛の没後、五合庵は築後200年以上経過して、豪雪によりつぶれたとある。
いわゆる200年住宅だったのです。
カップマルタンの家
ル・コルビジュエのカップマルタンの小屋=3.66mx3.66m=(8帖)
この小屋は中村好文氏の「住宅巡礼」にも紹介されており有名な小屋です。
古今東西、最小限住宅の小屋対決において、一番小さいということになると、優勝者は鴨長明ということになります。
達観した隠者の身であれば、ここまでのミニマムな空間であっても用が足りてしまうという究極の姿ですね。
我足るを知る。
満足とは心から生まれるもの。
小屋に居を構え、宇宙と交信していた3人は、 むしろ大きなスケールで自然を感じ、「これでいいのだ」思っていたに違いありません。 そんな3人も、われわれと同じ人間です。
かたや、人間の欲は幾ら食っても満たされぬ。妖怪、カオナシのような心を持つ人間もいる。
人間のありようの、ぶれ幅の大きさは、ここまで違うんだ。と、 隠者へ思いを巡らせると気付くことができます。