暖房エネを増減させる要素とは
そもそものお話ですが、「暖房」とはどんな意味でしょう?
答えは単純です。そう。家を熱で暖めることです。
では 暖房にはどれほどの「熱」が必要でしょうか?
答え: 家から逃げて出ていった分の熱です。
ということは、断熱仕様が良いほど熱が逃げにくいので、暖房の熱が少なくて済みます。
では断熱仕様が同じであれば、だいたい暖房の必要エネルギーは同じくらいなものなのか?
いやいや実は 床面積と断熱仕様が同じでも、床面積当たりの暖房エネルギーに大きな差が表れて、時には半分以下になるという現象が起こります。
そうさせる要因の1つ目が、外気の影響を植える外皮面積の度合いです。
次の2つ目が、南面からの日射取得の度合いです。
プロトタイプモデルハウスは延べ床面積で32坪の普通の家です。
間口5間x奥行3.5間の南向きの総2階です。
総2階のシンプルな設計だから、①床面積当たりの外皮面積が少ないです。
そして、特徴として、南面方向に、H=2mのはきだし窓が6つもついている。
南面の開口が最大級で、それ以外の面はかなり絞り込んであります。かなりメリハリが効いたサッシの配置です。
モデルハウスと事例2件と比較してみる
モデルハウスと 近頃設計している物件を2つ例にとって、断熱仕様が同じで設計が異なると どのように暖房エネルギーが変化するのか対比してみました。
計算条件: 利用ソフトQPEX Vor2.07 24時間 20℃
外皮面積・床面積
モデルハウスと物件Aでは、床面積に差はありません。
物件Bはやや小ぶりなので、なおかつ設計は総2階でないので、外皮面積が延べ床面積の割に2割ほど多くなっている。
Q値
モデルハウスと物件Aに差がぜんぜんありません。
物件Bは外皮面積/床面積の比率に応じて、Q値が2割ほど増えている。
そもそも、Q値というのは延べ床面積あたりの熱の損失係数だから、面積当たりの外皮面積が多ければ、だいたい比例してくるということですね。
日射取得熱・内外温度差:
物件A・Bともに窓の設定は一般的であるが、モデルハウスは南面の開口部が2倍以上大きいために、取り込めた熱が倍以上となっている。
その取り込めた熱のために、暖房しないで自然に生じる外との温度差が、モデルハウスでは8.23度となる。(外が0℃でも中は8℃以上ということ)
一番少ない物件Bと比較すると3.34℃もの差になる。物件Bはその分だけ余計に暖房エネルギーを使う必要がある。
室内の暖房温度設定を変化させると、暖房エネルギーはどう変化するか?は、だいぶ前に記事にしました。 今回、物件を横並びにしてみて 改めてその重要性を確認できました。
暖房エネルギー
結果的に面積当たりの暖房エネルギーは、物件Bではモデルハウスの2倍以上必要という結果になりました。
ここで確認しておきたいのですが、あくまでこの3つの物件は、天井や壁、サッシなどの断熱仕様は一緒であるということです。
一般的なイメージでは、新潟は冬の日射に乏しい地域であるから、南からの日射取得が少ない気がしますが、設計をパッシブ性を強めると、ある程度の成果が出ることが分かります。
パッシブな設計 = 太陽に素直な設計
パッシブな設計とは、太陽や風という自然エネルギーをじょうずに利用できるように設計を工夫するということです。その大切さをご理解いただいたと思います。
モデルハウスの場合は、南方向に開けており冬期に十二分に日射が望めます。
土地を探すときに立地条件がいいとか悪いとか言いますが、周辺の利便性だけでなく、日射条件も大事だということですね。
3つのバランス
結論としては、「快適で経済的な住宅」を手に入れるには、高レベルで3つの要素をバランスよく組み立てることが必要です。