設計の課題その3:わがままなアトリエ(前編)
我が家の設計の課題3つ目。
今回は、私のアトリエの話です。
私はこれまでずっとフリーでイラストやデザインの仕事をしてきた関係で、自宅での作業スペースには、いつも悩まされていました。
とくに駆け出しの頃はお金がないため、狭い賃貸で工夫して制作してきたものです。
新潟に移り住んでからは、自宅とは別でアトリエ兼店舗として一軒家を借りて、作業場も在庫もそこに保管していました。広くなったおかげで、これまで手が出せなかったいろんなことにも挑戦できるようになったのでした。
ところが、出産を機に、アトリエは解約して自宅で作業するようになり、再び不便さに悩まされるように…。
▲以前借りていた店舗。
イラストやデザインだけならまだよかったのですが、数年前からシルクスクリーンや活版印刷に手を出してしまい、機材も増えてしまってほんとうに大変でした。
理想のアトリエって?
▲ボロでへんてこな古いものたち。
大量で場所をとる機材と、専用の設備、そして在庫をすっきりと収納できる機能。
なおかつ、古道具たちがのびのびと出来る自分のコレクションルーム。
これが私の求めるアトリエの役割でした。
夫はどちらかというとモダンなナチュラルテイストのものが好きで、
私が集めてくるボロの道具にはいつも顔をしかめるのでした。苦笑
そんなこともあり、私の道具たちの避難場所としても、アトリエは必須…。
作業場だけではない、アトリエの意義…。
▲京都の母が借りている町屋。母もアトリエとして使っている。
▲古い場所がもつ佇まいを、新築で味わうことは無理?
アトリエとして、機能面でいえば設備さえ揃っていればいいのに、どうしてもこだわりたかったのは、その空間の古い質感でした。
これまでの仕事も、古いものや古書にかかわる仕事をずっと続けてきました。
暮らしてきた場所もすべてボロ、家具もボロだった自分にとって、新築での暮らしには正直不安がありました。
ぴかぴかの新築で、古道具たちが落ち着かず、浮いてしまうのでは…。
そもそも、どうして古いものが好きなのか。
小さい頃は、とにかく本のある場所が好きで、古い図書館や、祖父の本棚を眺めるのが大好きでした。古い昭和の家のしつらえと、ぎっしり並んだ本の背表紙。あの家具と本の記憶が、自分の古道具と古書への執着を生んだのだと思います。
祖父の本棚から本を取り出し、ぱらぱらと読んでいると、縁側からは日当たりのいい庭が見えて、その安心感は言葉にできないものでした。
戦前に建てられた祖父の家は、古びた木の建て具などが匂いとともに今でも思い出されます。
古い家具や本を蒐集するのは、失われたあの時間を再現するため。
アトリエ、というのは単なる世間的な体裁でしかなく、本当は私の避難場所です。これから先、ずっと暮らす家に、その空間がどうしても必要なのでした。
これまでは、そこにすでにある空間をどう生かすのか、アレンジするのかをかんがえてきましたが、新築の場合は間取りから自分で考えるというもの。その自由度は、あまりにも自由すぎて、答えをだすのが本当に難しかったです。
次回、詳しくお話します。