「家が私たちに合う」という感覚
私がこの家で暮らし始めて、最初に感動したのは「家が私たちに合っている…」ということでした。
注文住宅を建てたのですから当たり前です。
でも「家が自分たちの暮らしに合う」という感覚は、自分たちの理想とする暮らし方をカタチ(設計)にしてもらい、そこに住んだ人だけが体感し得る特別な感覚じゃないかと思います。
そして、今までは自分たちが家に合わせてきたんだなぁ〜。と改めて気づきました。
この部屋はこう使おう、収納はこの壁面に合うサイズで。
とか、ソファは小さいサイズじゃないと部屋が狭くなるな…。という具合に。
もちろん合わせる楽しさもあります。
まっさらな部屋をインテリアで自分のカラーに染めていく作業は楽しいです。
でも、大学から一人暮らしを始め、人生の節目ごとに住む場所を点々としながら「住まいに合わせてきた」私には「住まいが自分に合う」という感覚はとても新鮮でした。
大量のキャンプ道具を土間に入れ、ご飯を作れば、当たり前の様にデッキに並べて食事する。
パソコンに向かえば窓から美しい緑が見え、夕日を見ながらお風呂に入る。
洗濯すれば、移動せずに干す場所があり、
子どもの泥汚れが洗いやすい様にと選んだ実験用シンクでジャブジャブ洗う。
こんな暮らしがしたかった!
自分の生活の動きのスムーズなこと!
家に住み始めたばかりの頃は、家のどこかで何かをするたびに
「そうそう!こんな風にしたかった!」
とその場その場で感動していました。
今はネットや雑誌などでたくさんの施工事例やかっこいい建築図面が簡単に見ることができる時代です。でも、ただそれをなぞっても、きっと私たちが今感じている「家が暮らしに合う」という感覚は得られなかったと思うのです。
思いつくままに描いた家づくりのマインドマップ
私たちは設計をお願いする前に、設計士の阿部さんに私たち家族のことを知ってもらおうと思いました。
自分たちがどんなことが好きで、今はどんな生活をしているのか、そしてこれからどんな暮らし方、生き方をしていきたいのか、夫と2人で思いつくままに大きな模造紙いっぱいに埋めていくことにしました。
表現方法もまちまちで「部屋のどこにいても外を感じる工夫を」「小さいけど広さを感じる」といった抽象的なキーワードもあれば、スクラップした写真を集めて貼りつけたり、アイデアをイラストにして書いたり…
例えばこんな感じです。
- 当時の住んでいた部屋の写真を貼り、今の暮らしを書き込む。
- 切り抜いた建築事例と、どの部分に惹かれているかメモを付ける。
- 木と白い壁の比率や、好みの素材感を伝える為にイメージに合う施工事例の写真を貼る。
- 具体的な造作家具アイデアのイラスト
- 10年後、30年後の長期的な庭の敷地利用計画
なかには
「キャンプやカヤックなどのアウトドアは一人で楽しむのではなく家族全員でやるのが我が家流」など、おおよそ家づくりと関係のなさそうなことも書きました。
一見すると設計要望の様ですが、
これは模造紙いっぱいに広がる「私たちの壮大な自己紹介」です!
ありったけのパズルのピースをお渡しし、あとは知恵や技術を持った信頼するプロにお任せです。
設計案が出てくるまでの間はとても楽しみで「どうなるかねえ」と毎日ワクワクそわそわしていました。
ピタリとはまった設計提案
待ちに待った阿部さんからの設計案はたった1つ、A案B案はありません。
きっと私たちのことをたくさん想像し、思い巡らせ「ウチにはこれしかない!」と行き着いた、迷いのない1つのカタチだったのだと思います。
「見せたいけど怖いな〜」と笑みを浮かべながらも、恐る恐る出して下さった図面には、私たちが想い描いた「欲しい場所」達がものの見事にピタリと納めてありました。
こうして完成した我が家は、私たちの暮らしを温かく豊かに支えてくれています。
板張りの船底天井が見えるリビングはとても美しくおおらかで、開放的なのびのびとした気持ちにさせてくれます。
ワークスペースと寝室は天井が近くて、窓から見える緑が気持ちを落ち着かせてくれます。
小さな箱(家)でほぼワンルームの間取りなのに、見る角度それぞれに別の雰囲気があり、どこを見ても美しいのがとても気に入っています。家のカタチだって最高にかっこいい!
阿部さんが私たちのことを「よく知り」設計して下さったこの家は
「家が私たちに合っている!」という特別な感覚を感じさせてくれる、
私たちが自然と暮らすのに「ぴったり」の素晴らしい家なのです。