OWNERS COLUMN & INTERVIEW

オーナーズコラム&インタビュー

vol.7 わがままなアトリエ(後編)

高橋家高橋家

設計の課題その3:わがままなアトリエ(後編)

前置きが長くなってしまいましたが、自分の理想のアトリエを作るという、人生でおそらくこれで最後(のはず…)の、超個人的一大プロジェクトが始まりました。

最初の難関は、夫を納得させること。
これまでのように外で仕事場を借りることを考えれば…
云々、主人を説得して、家の間取りにまずは「アトリエ」を確保したのでした。

アトリエの場所は、居住スペースとは空間的にきっちり離したかったので、離れのような間取りで庭ごと隔離できる位置に決めました。

箱型の二階建ての居住スペースに、平屋のアトリエ小屋を脇にくっつけるようなイメージです。

 

古いものが落ち着く空間に

居住スペースでは夫の好みもあり、古道具はあまり置けないので、アトリエは自分の好きな古いものが、のびのびできるように素材や建て具を選ぶことにしました。

まず、アトリエの入り口のドア。
いつも家具などでお世話になってる古道具ハチミツさんに探しに行きました。

京都の古建て具の専門店にも行きましたが、ハチミツさんのところにあった、さっぱりとした質感のこのドアに決定。真鍮の持ち手がかわいいのです。

 

古いドアを選ぶとき、意外と難しかったのが、幅と高さ。
昔の日本の建て具はかなり小ぶりで、大きい荷物の出し入れが多いアトリエには、だいたいのものがちょっと小さめでした。
海外の古いドアは大きさもあって素敵なんですけど、そういうものはお値段もかなり高かったです。

あと、どうしてもつけたかったのが、室内窓です。

古い昔の窓ガラスを玄関とアトリエの壁面に取り付けることにしました。

 

あと、この建て具とあわせて悩んだのが壁の素材です。

以前借りていたアトリエでは漆喰を自分で塗っていました。こげ茶系の古い家具が一番きれいに映えるのは白い漆喰ですが、かなり悩んだ末、より個性のあるモルタルに挑戦することにしました。

モルタルの施工は、無理を言って古道具ハチミツさんに依頼させていただきました。

どうしても出したかったのが、モルタルの塗りむらによる陰影です。

左官屋さんでは上手すぎて塗りむらは出せないのだそうです。

絵画でいうマチエールを壁面で出すことによって、空間自体の色がかわります。

 

古い建て具とも違和感なくマッチしました。

 

そして最後の最後まで悩んだのが床材。

製版のとき水もこぼれるし、印刷ではインクなどで床が汚れることも多いので、床もモルタルにしようかと思いましたが、冷えるなどの理由から、足場板を使うことにしました。

取り寄せた足場板の質感がイメージと違ったため、急遽色を塗ったりしたサンプルを作成してもらいました。希望通りの加工を、わざわざしていただくことに。

そこまで対応をしてくださったオガスタのみなさんの優しさに感謝です。涙

 


▲完成当時のアトリエ。

▲薄暗いモルタルの色と、明るめの建て具の色が気に入っています。

モルタル仕上げとの見切り

 


▲玄関から見た図

 

アトリエだけ壁面にモルタルを使用したので、他の部屋との境界の処理について心配をしていました。でも、ちょうどアトリエが玄関脇に位置したため、内窓や素材の切り替えがあっても気になりませんでした。

また、一番気になっていたのがサッシとの相性です。

樹脂サッシのフレームは目立たないように処理しましたが、意外とそんなには気にならなかったです。


ちなみにアトリエの前庭は露地風にして、玄関脇の隠しルーバーから出入りできるようにしてあります。

収納の悩み

前庭との兼ね合いもあり、確保したアトリエの広さは9帖。

活版印刷機やシルクスクリーン印刷機、露光機をここに収め、あと製版用の大きな流しを設置するとなると、9帖はあっと言う間に埋まってしまいました。

直近まで三階建のアトリエ兼店舗を借りていたせいで、荷物や機材が大量に増えてしまい、什器など大量に処分しても、このままでは、ものが収まり切らない…。

部屋の中央の作業台とは別で、壁面にも作り付けの作業台を設置しました。その上には棚を壁に取り付けて、こまごましたものを収納しました。

また、長い作業机の足元にも、プリンタなどの周辺機器や、ダンボールや本などを収納できるようにして、みえないように布で隠しています。


▲よく使う画材や道具は、古道具の木箱などに入れてあります

 

完成後のアトリエ

家の中でもがらりと違う雰囲気のアトリエ。

白い壁面の明るい居住空間とは対照的に、モルタルと古建て具のおかげで、ほの暗い空間が完成しました。

本当は明かりとりの天窓も提案されたのですが、薄暗いほうがいい、というわたしの要望から、足元の明かりとりに変更したのです。

おかげで、町屋のようなひんやりとした陰影のある部屋になりました。

 

特別大きな予算をかけたわけではないですが、手間とイメージをしっかり持って作ったアトリエは、最高にわがままな空間。

一生大切に使わせていただきます。

高橋家

高橋家

30代夫婦と4歳の息子、そして雑種犬ミヤビで暮らしています。 アーティスト(版画作家)でもある妻のつくる「アートと季節感を愉しむ暮らし」。 現在は夫婦共働きで忙しい毎日。 週末をいかに楽しむかがわが家の命題です。

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