杉板外壁の設計上の配慮
杉板外壁をより長持ちさせるために設計するときにのポイントを整理しました。① 軒を深くし 雨にぬれにくくすること
これは伝統的な日本の建築物と同じ知恵です。 雨に濡れなければ木材は乾く。
乾いた木材は腐らない。単純な理由です。
イメージとしてみれば神社です。 神社は軒を深く出し、雨から建物を守っております。だから何十年と木の外壁は全くノーメンテで、下手すれば数百年 外壁はほったらかしです。
② 濡れても乾きやすい施工とすること
木材は放湿性が高いために、水に濡れても次第に乾いていきます。
より乾きやすいように施工すると、より良いわけです。
木の板の裏に胴縁で通気を確保することはもちろんです。
(日本で一番有名で人気のある住宅といえばコレ! 軽井沢山荘 )
我々の場合は、吉村順三どのが軽井沢山荘で張っていたやり方にならって、縦張りにして押し縁で留めます。
縦に板を張ることで水が重力で切れていきます。横張りよりも乾きやすい。そんな工夫があります。 見た目にもすっきりしていて合理的な方法です。
また、杉板は、あえてつるつるに仕上げないで、ざらざらの状態で使ったほうが、表面積が大きくなり乾きやすいといいます。
私どもの今後は、防腐処理だけで塗装はしない場合はざらざらで。
塗装をする場合はプレーナー仕上というつるつるで仕上げます。
③ 木表で張り上げること
「外気が乾燥すれば外側に反り、躯体内の水蒸気が外部に逃げていく。外気が湿気が多くなると内側に反り、内部に湿気が入りにくくなる。」
これは エコ住宅の神様、西方先生から直々に教わりました。
なるほど、すべてに理由があるのですね。
④ 耐久性の良い赤身をつかうこと
杉は芯に近い部分は赤身。外側が白太と呼びます。 白太には水分と栄養が多いためにカビが生えやすいのと、赤味には油っけとタンニンが多く含まれていて耐久性が高いと言われています。
西方先生は地の利を生かして、日本の中でも良材で名の知れた「秋田杉」の赤身だけを選んを外壁に用いております。
先生は「秋田赤ナマハゲ杉板」と命名されました。!
いかにも強そうな理想的な外壁です。
我々も 赤みの多くなるように努めております。
⑤ 保護処理をすること
着色する場合は、色選びも重要です。
すぐれた工夫として、ニューズラインの社屋を紹介します。
ここは新潟を代表する設計事務所のデザインルーム・アマノの作品です。こちらでは、天野カラーというべき特別ブレンドしたライトグレーのキシラデコールで着色しておりました。杉板は経年変化でライトグレーに変化してきます。
最初から古色に近い色にすることで、表面の顔料が取れてきたとしても違和感がないという工夫です。 または黒・白という無彩色は退色しないので色の保持が良いですし、 同様に茶系も持ちがよいです。
(2018年追記:)
親松の家のライトグレーも同じ発想の色のチョイス)
以上をざっと見まわしてみて、建築の神様クラスの先生方の外壁の処理の方法は、実は共通しているということがわかります。
時代が変われど良いものは良い。 それがスタンダードということです。