自然素材で健康住宅はオワコンか?
かつて、壁紙で使っている接着剤や
合板類から発生するホルムアルデヒドが、
原因となり「シックハウス症候群」が社会問題になりました。
その反動で、健康住宅ブームが巻き起こり、
自然素材を使った住宅が人気になりました。
約20年前の話しです。
私たちも自然素材を建物の仕上げとして多用しておりますが、
それにより、住む人への健康につながるとは、一言も言ってません。
自然素材は人工のものよりも、
圧倒的に美しいから使っている。それだけです。
現実問題として、現在ではホルム建材が使われなくなっているので、
自然素材を「使う・使わない」は、
あまり実は健康に対しての影響は無いに等しいのです。
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むしろ、室内の空気の質で差が出てくるのは、
温熱環境と換気のあり方が、圧倒的に重要なのです。
漆喰の壁はコロナ対策となるのか?
しかし、こういったコロナの影響下で、社会不安が増していると、
むくむくと「自然素材=コロナ対策」みたいな広告も
目にするようになり気になってくる。
これは、ある会社の事例で
「漆喰は5分でコロナウィルスを100%死滅させる。」
「しっくいの空間で暮らすことで、接触感染リスクを減らすことができます。」とPRしていますが、壁に漆喰を使うことで本当にコロナ対策で有効なのでしょうか?
確かに、石鹸や漂白剤など、アルカリ性の物質は
ウィルスを分解し無害化する。
漆喰の表面もアルカリなのでウィルスは早期に分解される。
そこは間違いないです。
コロナの飛沫感染には無意味
しかし、感染予防につながるかというと極めて効果に疑問です。
コロナは2メートル以内の感染者からの飛沫エアロゾルで感染する。
誕生したばかりの「富岳」スパコンの分析。(写真:NHKより)
相手の人間を飛び越して、エアロゾルが壁に付着する量は極めて少なく、
その壁に付着するまでの手前に人間がいるので、コロナ対策として、壁がしっくいかどうかは、どうでもいいことがわかります。
さらに壁を人間がつねに触れるわけではないし、
ウィルスはカビでは無いから、そこで繁殖し、再飛散するわけでもないので、
壁がアルカリ殺菌されようがされまいが、全然関係ないことです。
その前に、キープ・ディスタンスが重要だし、
漂うマイクロ飛沫(エアロゾル)を希釈させる「換気」が重要でです。
法律違反となる広告表現
こういった社会不安を背景に、
科学的根拠のない商品が、他を含め、たびたび目につきますが、
これでセールスをかけている本人たちも、
効果が無いことを 分かっていないのではないのか?
分かってないから、社会的正義感で、そのようにPRしまっているのか?
無知ゆえに何でも許されるかというと、消費者保護の観点でみると問題がある。
「しっくいの空間で暮らすことで、接触感染リスクを減らすことができます。」との表現は、医学的に効果が無いことを広告に掲載しているとなると、不当景品類及び不当表示防止法、ならびに薬機法に違反する可能性が高いと考えます。
エセ科学を見分ける目を持つ
(建築エコノミスト森山さんのブログより)
壁天井の仕上げよりも、飛沫が落ちる、
床やテーブルなど「平面部分」に対しての消毒などが重要で、
平面部については、飲食店などであれば、
アルコールや、次亜塩素水などで定期的にふき取る対策がされて有効です。
こういった対策は、すでに政府から広報されている内容でカバーされていて、
十分かつ有効です。
このように、一部科学的な事柄で表現されていても、
実は効果が無い事柄を「ニセ科学」といいまして、世の中にあふれている。
住宅関係者も、消費者も見分けられるように注意が必要です。
その見分け方について書かれた書籍はこれ。
さらにご興味のある方にお勧めします。
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