大屋根の平屋で小さく暮らす「弥彦の家D」実家リノベーション
設計:塩谷 英一/監督:山田 剛
- コンセプト
- 目の前に弥彦山の眺望があり、広い菜園や小屋のある敷地。ご高齢のお母さんと娘さん、年老いた柴犬が温かく過ごすためのリノベーションです。
暮らしの変容にともない、二人と一匹で住まうには大きくなりすぎた古くて寒い実家。この大きすぎる1棟を適度な3棟に分解し、中心に3つをつなぐ内庭を配置して3棟を再構成しました。(1)メインの基本生活を送る平屋・大屋根の「新築棟」 (2)仏壇・神棚・囲炉裏のある座敷をそのまま残した「既存棟」 (3)新築等と既存棟の共通エントランスとして既存玄関を内庭とつながる半屋外的な土間空間に改修した「玄関改修棟」の3棟。使用頻度の低い座敷を切り離し、大きすぎる二階建てを減築し、新たにサイズダウンした平屋を増築し、既存玄関を改修して2棟をつなぐ共通の土間として再生しました。既築、減築、増築、改築による暮らしの重層。既存、新設、新旧混在というそれぞれの時間が同居するお家です。
- 外観
- 3つの棟の外観的な仕上げはそろえています。屋根は既存に合わせて安田瓦の大屋根とし、正面の外壁は新築棟から玄関改修棟まで連続した杉板タテ張りの仕上げによって新・旧をつないでいます。新・旧をつなぐ横長の杉板外壁の開口からは、大屋根の室内、玄関土間越しの内庭や奥の座敷が垣間見えます。独立した1棟ではなく、二階を減築してすべて平屋で再構成した3つの低い棟の集まりは、地面に寄り添った風景をつくっています。
- 内観
- 大屋根の開放感が民家的なスケール感を思わせます。外庭に面した南側には家の端から端まで東西に土間が走り、家の中に外があるような、家全体で庭とのつながりをより一層感じさせます。土間に面して端から端までのLDKと畳小上りを配置することで、土間のワンちゃんに寄り添った暮らしができます。大屋根の頂部の下には、やはり家の端から端まで東西に低いロフトが走っています。ロフトの構造は現しとし、低く横長のロフトの木の架構の下に水回りなどの小さな機能(キッチン、トイレ、洗面、勝手口、パントリー、ロフト階段、裏通路)を配置しています。ロフトであると同時に、一連の小さな機能を収納した家具のような役割をもたせています。小屋にあった古い無垢のケヤキの板材を加工し、室内の壁面で再生しています。玄関改修棟でも既存の建具を再利用しており、新・旧の素材が混在した室内になっています。
- 規模・構造
- 敷地面積:291.14坪
延床面積:30坪
木造在来工法 平屋建
- 性能
- 耐震等級2以上
Q値:1.19[W/㎡K]
Ua値:0.33[W/㎡K]
暖房負荷:34.2[kWh/㎡]
冷房負荷:9.4[kWh/㎡]
空調計画:床下エアコン暖房+ロフトエアコン冷房方式