新潟平野をつかまえる家「赤塚のリノベーション」
設計:塩谷 英一 監督:波潟 靖 棟梁:青山大工
- コンセプト
- 築27年、45坪の家のリノベーションです。この赤塚の集落は、新潟平野の豊かな広がりを感じさせる一帯にあります。水平な大地の上にゆったりとした民家が間隔をあけて、のびのびと建つ。近くには長距離飛行の渡り鳥を守るラムサール条約登録の佐潟があり、冬の間はシベリアから来た白鳥たちの飛行する姿が見られます。この家は、集落と農地とのちょうど境い目(エッジ)に建っているため、南側の農地にたいして、目の前が全面的に開けています。
今回、このようなきわめて新潟らしい風景とは、まるで無縁の状態でそこに建っていた家のあり方を見直しました。切り離された風景を取り戻すような感じで、南側を全面的に開放し、庭とつなげ、渡り鳥が飛行する目の前の平野をひょいっとつかまえて、家のなかに取り込む計画としました。
瓦屋根、柱と梁の架構、土台と基礎は既存のまま利用し、スケルトンにした上で耐震性の向上、温熱環境の向上、仕上げと設備の向上、間取りの向上を行いました。
- 外観、庭
- 集落が共通してもつ民家的な堂々とした美しさや大らかさ、お施主さんが丁寧に管理して育てていた親和的な庭木のあり方など、もともとその場所が持っていたいくつかの外部の環境的な要素は、リノベーションとして新しい家のあり方を考える上での前提になりました。
堂々としてゆったり建つその外形と瓦屋根はそのまま残し、外壁の仕上げを周辺環境に馴染むよう刷新しました。既存の庭木はそのまま残して剪定し、一部は移植しました。アプローチは撤去してやり直し、素材を変えつつ新たに再生しました。
南側のいくつかの壁やブロック塀を取り払い、もともとそこにあった庭を露呈させて家の外と内の両方に開き、1階の床を少しだけ減築してデッキテラスの月見舞台を新たにつくりました。これにより、庭と月見舞台を介して、外の平野と室内とをつなげました。
前面の道路から1mほど高いところに家が建っているため、アプローチの庭が段々となり、月見舞台が宙に浮いて庭に突き出したような格好です。新潟平野、道、低い庭、高い庭、月見舞台、室内、といった段々の構成となります。
- 内観
- 主室に、三人の娘さんが弾くグランドピアノを置くことを前提として、間取り、空間的な造形、仕上げ材を決め、ピアノの周辺はすべて音響を考慮したものとしています。
ピアノの上部には新たに吹抜けを設け、吹抜けの天井はフラットにせず、一部は屋根の勾配そのままの勾配天井としています。仕上げ材についても音響を考慮し、多孔質の珪藻土を塗り回しています。小屋組みの丸太梁を一部現しにして、左官で塗り込め凸凹をつくっています。ピアノ置き場はニッチにし、ニッチの天井も下屋と同じ角度の勾配天井にしています。リビングの天井は木の格子です。角材を天井から浮かせつつ部材のサイズを2種類用いて不規則に並べることで、自然で違和感のない凸凹というか波というか揺らぎをつくり出しています。西側の壁面は端から端まで、一面すべてを飾り棚的・収納家具+床の間にし、吸音に配慮しています。
左官仕上げは、お施主さん一家(父、母、三人娘)によるDIYによるもので、お祭りのようなにぎやかで華のある現場となり、素直で大らかな仕上がりとなりました。
主室に面した大開口からは、庭越しに新潟の農地の地平を見渡すことができ、デッキテラスの舞台からは、白鳥、月、花火などを観測することができます。
既存の床の間で使っていたカリンの床柱は、加工していくつかの造作材としてあちこちで使い、再生させました。
- 構造、素材
- 改修用のプログラムによる構造計算にしたがって耐震補強を施しております。2階の直下に柱が不足していたため柱を追加し、間取りの変更により柱を抜いたところは梁の補強をしっかりと行いました。既存の柱と梁、新たに入れた柱と梁は一部あらわしとしました。柱にポッカリ開いたホゾ穴や切り欠きの跡は、埋め木をしたり残したままにしています。
- 規模
- 敷地面積:99.27坪
延床面積:42.50坪(改修前 43.50坪)
構造:木造在来工法 2階建て
- 性能
- 耐震等級2以上
Q値:0.86 [W/㎡K]
Ua値:0.33[W/㎡K]
暖房負荷:16.1[kWh/㎡]
冷房負荷:10.5 [kWh/㎡]
空調計画:壁掛けエアコン暖房+壁掛けエアコン冷房方式