OWNERS COLUMN & INTERVIEW

オーナーズコラム&インタビュー

vol.6 暮らしの中の「食べること」

めぐみめぐみ

暮らしの中の「食べること」

こんにちは、めぐみです。
今回は暮らしの中の「食べること」について、
自分なりに大事にしている想いを、酒屋の嫁目線でお伝えしたいと思います。

我が家の食卓にてそうめんを食べるこどもたち

さかのぼること20年。(笑)
私は独身時代は印刷業の営業職として、忙しく外回りをしておりました。
当時の仕事の内容は、社運を賭けたチラシの制作、イベントのポスターやパンフレットを企画段階から関わり、イチから作ります。直接クライアントの収益に関わることも多く、色んなジャンルの世界を垣間見られる仕事は本当に勉強になりました。

そうして30代が見えかけた頃、酒屋を営む主人と出会い、半年の交際を経て結婚。
子供を授かり、子育て、その傍ら家族の毎日の食事づくりと、最初は初めてのことについて行くのがやっとでした。
ようやくこの生活に慣れた頃、今度は2人目、3人目と3年おきに子供は増え(笑)
幸せを感じている反面、本当の自分の人生が停滞してしまったような、社会から疎外されているような「おいてけぼり感」が、ふっ、とわいてきて自分をとらえます。
「働いて、社員として店を手伝いたい。この停滞から、早く脱却したい。」
子育てという尊い仕事をできる期間は限られているのに、その渦中にいて私は焦っておりました。

しかし。
十数年の間、そうして繰り返し家庭の中心の暮らしで同じことを続けてこられたのは、
家族の「食べること」に関わってこられたからじゃないのかな?と今は思うのです。

主婦として 母として

3人の子供たちはみんな母乳で育ちましたが、
私が大好きな焼き菓子をモソモソと食べる度に、
誰かは授乳中に顔をしかめ、誰かは一晩に何度も泣いて目を覚ましました。
胃もたれでもおこしたのでしょう。私も乳腺を詰まらせ、何度苦しんだことでしょう。
(乳腺が詰まっても甘いものはやめられなかったけど(^^;;)

母乳は血液と同じ。
ほんの少し甘いもの、油っこいものを食べただけでそれがドロつく訳なので、
現代人の生活習慣病もよく理解できます。


↑二女 2歳くらいの頃の食事風景

私の離乳食づくりは、
手は込んでいませんでしたが、材料だけは安心して食べられるものをと、
実母の作る露地野菜や親戚のつくるお米、店で扱う信頼のおける調味料を駆使しました。
そして、出汁はキチンと自分でとったものを使いました。

すると、
トマトの酸味は苦手、
芋は水分を足して、
素麺はダメだがうどんなら食べるのね。・・など

せっかく作るのだから食べてもらわなくては。と、実験魂に火がつきます (笑)

そんなふうに、自分の作ったものを食べて日に日にコロコロしていく我が子!
「人の体は毎日の食べ物によって出来ている」という当たり前の事実をズババと目の当たりにし、深〜く納得する日々なのでした。


築地の伏髙さんから取り寄せている鰹節。美味しい出汁がとれます。

一緒に暮らしていた義両親への感謝

もうひとつ、昨年まで一緒に暮らしていた義両親の「食べ方」が、本当に魅力的で。
日中はお店に出ているので、お昼御飯は交代制で忙しなくかき込むのが常でしたが、夜です。
晩酌、ですね。

商売柄いただき物も多く、盛りの野菜や釣れすぎた魚(半分釣り自慢)、
山菜の類が毎晩食卓に並びます。
料理番は私でしたが、魚をさばくのは父が、山菜や頂いてすぐの野菜の処理は母が、
忙しくてもいそいそとしてくれました。
その処理は美しく、清潔で見事。食材への感謝をいつも感じました。
そして、はしりの野菜なんかをお浸しにすると、母は皿を私にまわしこう言うのです。
「美味しい!めぐちゃんも、味わってみて」

お腹を満たすことが本能ならば、味わうというのは、五感を働かせて食べることを愉しむ、
ということでしょうか。
義両親はほとんど間食をせず、お疲れ様の晩餐を本当に大事にしていました。
お酒を交わしながら、「今年は去年のより味が良い」とか、「この魚はほっぺのここの肉が美味しい」とか。高級なものより、その季節にしか食べられないものを、ことさら喜んでいたようです。
ゆっくり愉しんだあとの、お酒のせいか血色が良くなった、この上なく満たされた表情!
子供たちも、漬物やら山菜やらまだ苦手な風味のものも、同じ食卓を囲んでいれば味見くらいはしてくれる。味覚が発達する時期に、色んな味の体験をさせてもらえたと思います。

父は私の料理に「旨い」とか、「もっと薄味が良い」とか色々と感想を言ってくれたので、
それはとてもありがたかった。
我慢して苦手なものを食べるのはお互い辛いと、わかっての優しさだったと思います。
義両親からは、そんなふうに食べることを「愉しむ」ことを教わりました。


↑5人の孫に囲まれて晩酌する父

いまは新しい家をオガスタさんに建てて頂いて、夫婦と子供だけの家族5人で暮らしています。
義両親はまだ現役バリバリで店にでていますが、
私たちの家ができたことを機に食事は自分たちでまかなっています。
それまで毎晩食卓を囲んでいた義両親の家と200メートルも離れていないのに、我が家の献立はずいぶんと子供たち向けになりました。
なので、たまにお互いおかずを作り、母と交換しています。

3世代の嗜好が並ぶことはめったになくなりましたが、
あの豊かな食卓は今も100点満点の私の理想です。
これからもあの風景を思い出しながら、我が家の食べ方を追求していきたいと思っています。

新しい人生が動きだしました

そして私ごとですが、先月から正式に地酒の都屋の社員となりました。
まだまだ新人ながらはりきって店にたっております。

都屋全員集合!今夏から、お店にジェラートも置き始めます。遊びにいらしてくださいね。

停滞していたと思われた人生(笑)
けれども今、この立ち位置から振り返ると、あれはもちろん停滞ではなかった!
ああして大切な人たちのそばで、食べることがどんなに豊かで愉しく、
心と体をを満たすものなのかをじっと見ていたではないか。
あの経験があってこそ、ど素人に近いこの私が、日本の文化である日本酒を売ることができる。
晩酌のご相談にのれるのだと感じています。
忙しない子育ての合間に、癒されるお酒の楽しみ方を、こっそりお教えします(^-^)v

‥‥さて、本当は、毎日続く食事づくりが楽しくなるような料理と盛り付け、器、お酒とつまみについて書こうと思っていたのですが、そこにたどり着くのに避けて通れぬ道が、
今回のコラムの内容でした。

次回は梅雨明けした新潟で、暑気払いになるような夏の献立、おつまみなど、ご紹介出来ればと思っております。

めぐみ

めぐみ

酒屋に嫁いで12年、新潟市親松「地酒の都屋」のヨメ。 このたび、私たち夫婦と3人のこどもたちで暮らす家が完成したばかり。日々のこと、お店のこと、お料理とお酒のマリアージュ。 地酒の都屋:http://www.niigata-miyakoya.jp/

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