和風?洋風?
「外観は洋風にしてくれ」とか「和風にしてくれ」というご要望はよく聞かされていたものです。
気持ちは分かるのですが、何度言われても違和感のある言葉です。
何を持って「洋風」なのか?どうなったら「和風」なのか、明確でないからです。
たいていの日本人は「洋も和も」消化不良ながらアバウトに住みこなしていて、フローリングのリビングにコタツがあったり、極端なケースでは障子のある窓にカーテンをしていたりしているわけです。
「和風洋風」といわれる時に何が言いたいかは分かりますよ。
図面を眺めて、床が畳で、建具が引き戸・襖なら「和風」
床がフローリング貼りで、ドアなら「洋風」
同じように「屋根が和瓦」「障子がついている」「柱が見えている」「天井が板張り」が和風。
「屋根が赤い色」「窓にはカーテン」「柱が壁に見えない」「天井はクロス貼り」が洋風だということを指すのでしょう。
(1970年代の 日本の洋風住宅)
しかし、こうしたステレオタイプな分類は戦後ハウスメーカーが幻想として作り上げたものであって、実際のヨーロッパやアメリカの住宅を見れば、「洋風」といわれる「日本家屋」が、まったく異なるものであることはすぐ分かることです。
洋も和もなく、いいものはいい
また日本においても、江戸時代の農家の床の仕上げは、上等な座敷には畳が敷かれていましたが、囲炉裏端の部屋は板張りになっていたわけです。
アメリカの近代的な建物では、「ほの明るく光る壁」として「障子」はハイセンスな建築要素として人気があるよ、というのも聞いたことがある。
また、関係ないかもしれませんが、犬もアメリカでは「柴犬」は、日本以上に人気があるとも見聞きしました。ドイツ人も「ふとん」が寝やすく合理的な寝具として大変人気があり、ほとんどのドイツ国民にも知られた存在です。
たまに冗談で「いっそ洋風・和風ってのはやめて、 これからは中華風にしませんか?」
と言ったりしますが、私の真意は分かってもらえるはずもない。
いい家をつくろうとした時に「和風・洋風」はタブーともいえる言葉です。
和とか洋とか、幻想でしかないのだから、自分たちの感性に基づいて計画をすればいいのだと考えます。
いいものはいいのだ!
(実はこの文章、ハウスメーカー在籍時代に小冊子用に書きだめしたもののリライトでした)