くらかっこいい空間 を楽しむ
ヨーロッパ人も暗さを楽しむ気質があり、日本人のよくやってしまう青白い蛍光灯の室内は「人間性を破壊する」として考えている人が多い。レストランはごくごく当たり前にキャンドルライトだし、日本人からすれば驚くほど住宅の室内も照度が低い。
日本が150ルクスなら、推定彼らの平均は50ルクス。
ドイツ人に「暗い室内で生活していて目が悪くならないのか?」と質問したところ、
「明るい方が目が疲れて、目が悪くなるんだよ。お前たち日本人のほうがメガネをかけている人間が多いじゃないか」
と反論されたことがある。 そういえば日本人の方が目が悪い。
また、ドイツ時代に中東系の芸術家の家におじゃました時には驚いた。メインの照明というものがなく、真鍮製の油さしなどのコレクションだけにスポットが当たるだけの照明しかない。真鍮に反射する黄金色のきらめきだけが室内を満たし、この上なく美しかった。中東系のアイデンテティを大事にし、その人らしさの感じられる美意識で空間を楽しんでいることがよく分かった。
陰影礼賛
「横浜逍遙亭・写真帳」ブログより転載
暗がり無意味に恐れるより、暗がりを楽しめるほうが精神的には豊かである。
元来、日本人は、蛍光、月光、行灯、障子越しのほのあかるさ。ニュアンスのある光を楽しめる感受性を大事にしてきた。
谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」をまだお読みでない方には強くおススメします。暗さを楽しめるほうが文化的に成熟している。ようするに 大人だと思う。
暗さを演出する
いろいろな空間を見てきたが、かっこいい空間というのは、明るさではなく、むしろ「暗さを演出」し、空間に深みを出している。
住宅でなくて恐縮ですが、なかでも印象的であったのは、東京の上野の東京国立博物館「法隆寺宝物館」 のライティング。
1階の展示室は限界まで照度を落とされているので、入室すると最初はよく分からないが、ガラスケースに入った仏像が、マトリックスのように整然と並び、目が慣れるにつれ、浮かび上がってくる様は圧巻です。 歴史の霊気を封じ込めたがごとし。あれは忘れられません。
何が言いたいのかまとめると、住宅空間が暗くならないかの心配は、まったく気のせいです。明るくなって失敗するほうを恐れてください。