日本の家の70%が 脱衣所が冬に11度以下まで寒くなる 寒さが同居した家だといわれております。
今回登場の住宅は、新潟にどこでもある家族の住む家。 その温熱環境調査結果です。
住宅は自営業を営んでいた祖父の建てた家。 築28年の木造住宅です。
その47坪の木造住宅は、地域の工務店が昭和の終わりに建てました。
そこに祖父母+父母+子供3人の7名で住んでいます。
住宅は8年前にいたんだ外壁を、飛込みセールスに依頼して、金属サイディングでカバーするリフォームをした。
シングルサッシだったが、内窓を主要な窓に追加した状態です。
ひょっとして 読者のご実家とかこんな感じの家ではないでしょうか?
さて 今年一番の寒波の来た2014年2月7日~9日にかけて、この家の室内の温熱はどのようになったのか? 温度と湿度の調査を行いました。
温度と湿度のグラフの変化は、その家族の暮らしの全てが物語っているようであった。
エアコン暖房は乾燥する。
【1階居間の状況】
グラフの青が1階居間の温度。オレンジが湿度。
PM4時に家に一番早く帰ってきた家族が暖房をつける。
12度まで冷えた室温が20℃に達するまで2時間半を要している。
温度上昇につれて、湿度は26%まで低下している。
空間は8畳間で、暖房器具は壁掛けエアコンだ。
空気温度だけ高く、床はかなり冷たく、喉は乾く。
家族がみんな寝ると緩やかに温度が低下し、朝には8℃まで低下した。
空気が乾燥しているために窓の結露は観測できない。
【2階の部屋の状況】
赤が2階の部屋の温度 黄色が湿度。
室温低下は1階より激しく、最低で4℃まで低下している。
暖房器具の立ち上がりは比較的早いが、消すとすぐに寒くなる。
そのために就寝の時も数時間暖房をつけて寝ている。
暖房器具は石油ファンヒーターなので心配である。
灯油の開放式暖房器具は 結露を招く
1階と明確な差が湿度に現れていてかなり多湿である。
石油が燃えるときに大量の水蒸気が出るからで、暖房を消した時に相対湿度で70%付近で水平になっている。サッシの表面温度が低いので露点している。窓がどんどん結露をしていることがここで分かる。
脱衣所も風呂も暖房器具は置いていなく、非暖房エリアであることから入浴時には10℃を大きく割り込んでいることが推測できる。
月10万円の光熱費
光熱費も非常に高くついており、1月の電気代で5万円、ガス 灯油が加わりぜんぶで10万円程度になっている。
暖房はエアコン3台と、石油ファンヒーターが3台で、いずれも6帖から8帖の部屋をいるときだけつけているが、それぞれの部屋は快適ではない。
完全にこの家は「暖房とは、家を暖めず地球を暖めているだけ」だということがわかる。
このような家であるが、
昨年、町の電気屋さんのつながりでソーラー発電を300万円かけて屋根に載せた。
その際に、住宅会社に勤めている社会人の孫は「屋根も葺き替えをしなきゃならないのにダメじゃん。そんな金をかけるぐらいなら断熱改修工事すべきだ。」と忠告したが、
孫に言われてプライドが許さなかったらしく、「自分の家は自分で決める!」と聞く耳を持たなかったという。
祖父は近所の人から「ソーラー載せていいですね」と言われたかったようだ。
孫は祖父の健康上の問題も心配し、熱心にリフォームの方向性に意見したあまりに、喧嘩になってしまったという。
無駄なリフォーム工事が、断熱改修を妨げる
この家は、典型的に壁体内に気流があり、断熱材は効いていない。
小屋裏に暖房の熱が逃げている。
ということは屋根の下地が断続的に結露しているので、傷み具合も気になるところだ。
300万円かけて比較もせず注文したソーラーの工事代金を、投資回収するには20年これから必要となるわけだ。
加えて、8年前に外から張り増しした金属サイディングも、断熱改修をするとなると窓の全面交換や壁の改修の妨げになる。
リフォームでソーラーや外壁は、高額になるのでセールスの激しい分野だ。
しかし、なんら本質的な快適性を実現はしないし、むしろ改修工事では邪魔者になっている。無駄なカサブタのようなものだ。
寒さが同居する家は短命になる
そんな今年の1月の末。お隣に住んでいた、祖父と同じくらいの老人が、ヒートショックで亡くなってしまった。脱衣所に裸で倒れていて冷たくなっているのが発見されたという。ご愁傷様であります。 さすがに頑固な祖父も、ことの重要さに気づき、心配になってきた。・・・・・・・・
以上の話はすべて真実のお話であり、
日本の家屋の7割近くを占める普通の家の平均的な実態である。
だから、年間に1万7千人もの、おもに老人がヒートショックで亡くなっている。
私たちは何をなすべきか? もう 何も言うことはないだろう。