家屋被害が出ないためには、耐震性がどれくらい必要か?
地震で被害に遭わないようにするということは極めて重要で当たり前なことです。
地震の被害といっても主に家計においては2種類に分類されます。
それは「人的被害」と「家屋被害」です。
「人的被害」
建物の倒壊によって、圧死などがされることはあってはなりません。優先課題です。
これは、建築による多くの人的被害の生じた1995年の阪神淡路大震災が転換期です。
木造老朽家屋での倒壊事例が非常に多かった。この反省として住宅の耐震基準は大きく強化されました。2000年に建築基準法が改正になり現代の基準に至ります。
こうした基準法上の強度を満たす建物が、「耐震等級1」になり、その基準を満たさない建物は建てられることができなくなりました。
では耐震等級1の住宅が大きな地震に遭ったらどうなるのでしょうか?
基準法では、「数百年に1度発生する地震(震度6強から震度7程度)の地震力でも倒壊せず、数十年に1度発生する(震度5強程度)の地震力でも損傷しない程度」を目指しています。
これをわかりやすく別の表現で改めますと、
「阪神淡路大震災程度の揺れにあっても、中にいる人が死なせない程度の強度」ということになります。
それにより、これから造られる住宅の「人的被害」が生じるリスクが画期的に減らすことになったといえるでしょう。
等級1では「家屋被害」は免れない
というのも、「基準法を満たす程度の強度は、震度6強から震度7で「家屋倒壊」こそはしなくはなったが、少なからぬ家屋損害は出てもおかしくは無い。」というふうにも解釈が可能です。
では、耐震レベルによってどれほどの被害の差になるのか?
等身大スケールの耐震実験の結果で、ある程度推測できます。
「3棟のうち最も弱い建物は建築基準法の耐震基準と同じ強度で、国の住宅性能表示制度では「耐震等級1」。阪神大震災の際に神戸海洋気象台が観測した地震波(818ガル)を再現して等級1の建物を揺らしたところ、1階の柱や筋交いが折れ、実質的に倒壊した。
等級2(基準の1.25倍の耐震性)では壁板が浮いたり、柱のかすがいが抜けかかったりしたが、倒壊はせず、等級3(1.5倍の耐震性)は変形したものの、構造部分はほぼ無傷だった。
3棟には、内壁や内外装がほとんどないが、建物の強度は、柱やはりなど構造部分で確保するのが基本とされる。」
2006年に行われた「木質構造建築物の振動試験研究会」の実験より
ご覧のように上下階の中間(胴差)部分で座屈してしまっている。
倒壊こそしていないが、全壊被害です。
補足させてもらうと、現実では建物はこのようにスケルトンの状態にはならない。
耐力壁として計算されない外壁や内部の石膏ボードも何らかの耐震上の役割を果たすから、損害はこれよりも軽くはなるだろう。
しかし、1等級レベルでは十分ではない、余裕を持った耐震設計にすべきということには間違いはない。と思われます。 建物の強度は耐震等級で2以上にしたいものです。