東京大学の前準教授は、自身の著書「エコハウスのウソ」で知られてます。
給湯や暖房機器などの省エネ設備に関してが専門分野で、
温熱環境の測定ももちろんスペシャリストです。
日本初の、ルームエアコンを用いた階間エアコンの夏の成功を知り、
冬の環境測定をしたいと、以前から希望されていたのが、先般実現しました。
ビルダーズの取材に合わせてもらい、急遽の新潟入りであって、交通事情の関係でいろいろハプニングがありましたが、冬の新潟を知ってもらえて有意義でした。
車中で様々な分野での最新事情の情報交換ができて、それもありがたい。
近年大きなテーマになっている、全館空調の業界動向を教えていただいた。
階間エアコンの「中之島の家」の温熱調査
レトロをテーマにした古い建具を再利用したインテリアが特徴的です。
奥様の趣味のアロマオイルの香りが素敵な空間。
ご家族で出迎えていただきました。
室温は家じゅうで21℃ほどのちょうどいい暖かさ。
1階床の表面温度を測ってみると18℃。
床下暖房よりは温度は3~4℃ほど低いけれど、針葉樹の杉板を使っているために、
全く冷たく感じない。むしろぬくもりすら感じる感じます。
家族も皆さん、冬なのにはだしです。
ダイニングの仕上げも畳で、これも足触りもいい。
素足で暮らしたい人にはバッチリの組み合わせです。
木藤さんも前さんも、床の仕上げでの体感の違いを納得されてました。
1階天井の造作照明の脇に、ガラリを設けそこにブースターファンを仕込んで、
暖気を取り込む計画にしてました。
当初は1台で暮らしてましたが、外気温低下でやはり送風量が不足して、上下温度差が気になってきた・ そこで増設する段取りをしてましたが、調査がその前日での現場入りになりました。 それでも、充分快適に暮らされて、満足度はかなり高い様子です。
冬の電気代は1月当たり約20,000円で、プラス調理器具のガスの2,000円が加わった光熱費です。
前先生の環境測定はもちろん日本最強で、かなり刺激的です。
正確な環境測定は大変です。
トレードマークのサーモカメラは本体と特注レンズで合わせて400万円もするとんでもない高性能です。私たちは風量の調査を、風速を測って推計しますが、それでは正しい風量を測ることができない。専用の風量計を使うべきだと教えていただきました。
そうなるとそれなりに計測機器に高価なものが必要になりますので、一工務店にとったらハードルが高くなります。そこで新住協の地域グループなど工務店の連合で共同管理するなどする必要性を指摘しておりました。
前先生から見た「中之島の家」階間エアコン
「中之島の家」は、想像以上に1・2階の上下の温度差がないことが確認できました。
「階間エアコンの噴き出し口の温度が28度程度とかなり低温暖房になっていることで、
室温との温度差がほとんどなく、暖気が上昇しにくい上に、家の中付近で吹き出しているのが要因です。」と前先生が指摘します。
この住宅は、外皮性能でいえばHEAT20 G1グレードだし、
熱交換換気扇も使わずQ値で1.6程度の普通の断熱性能です。
この「中之島の家」は、オガスタの2018年引渡の家でも、もっともローコストな物件の一つです。
世の誰でも作れる最強のコストパフォーマンスで、最小限の冷暖房器具である1台のエアコン。
文句なしの快適性と光熱費。
一部の金持ちが、金に物言わせて実現する 「エゴハウス」であってもしょうがない。
普通の人が普通に手に入る「エコハウス」の可能性をここに見ることができます。
(断熱施工中の現場も立ち寄りました)
前先生の次に出す本は?
前先生はエクスナレッジから次なる著書を出そうと2年前から構想を練っている。
エコハウス関連では、「高断熱住宅で健康長寿」という切り口が氾濫し、
飽食気味でもう関心が薄れてきているし、まぁ、これからは誰でもそういう家が手に入るようになりつつあるわけです。
これからはもっと大きな次元で、1人の家づくりの判断によって50年後の日本が決まってしまうよ、との切り口で、むやみに質の低い新築をむやみにバラバラと好き放題建てるのではなく、社会インフラとしての道路・水道・電気・ガスといった社会インフラの整備も人口減少する社会を踏まえて、さまざまな分野を横断して、「エコハウスのうそ」とは全く違う切り口の本になるようです。