夏の本格的な暑さが目前になると、
テレビのCMや、インターネット広告で「冷風扇」が
やたらと目につくようになってきました。
結論から言うと購入はお勧めできない商品です。
Googleで調べると、ほとんど同じ機種に見えるものでも、
安いのでは3000円位から
高いもので10,000円近くまであります。
「冷風扇」とは、水の気化熱を利用して、
温度を下げた風を送る家電です。
暑さは、温度と湿度で決まる。
暑くて不快な状況を、「不快指数」と表現しますよね。
温度計で表示される温度と、
実際の体感の暑さとは異なります。
湿度の状況を同時に考えないとならないのです。
温度には2種類あって、顕熱と潜熱に分けられます。
「潜在化していたのが顕在化」するといいますよね。
温度計に表示される、表に見える熱を「顕熱」で、
見えない熱として、「水蒸気」の状態で存在する熱が「潜熱」です。
この二つの組み合わせで暑さが決まります。
100℃でもドライ・サウナで火傷しないのは?
具体例ではサウナです。
一般的なサウナは、フィンランド式の
「高温ドライサウナ」で、
サウナ室内は、室温が 80~100℃。湿度は10%程度になっている。
100℃のお湯を浴びれば、火傷をしてしまいますが、
人間は中に5~10分入ることができます。
高温ドライサウナは、湿度が極めて低いために、
体から出る汗が蒸発散する際の気化で熱を奪ってくれるからです。
サウナには乾式でなく、湿式のタイプもあります。
ミストサウナや蒸し風呂。新潟だと「嵐の湯」がこのタイプ。
江戸時代のお風呂の主流も、蒸気の蒸し風呂が主流であったようで、
実は日本人には古くから親しんできたタイプです。
「嵐の湯」の場合は、室内が45℃、湿度85~90%とのこと。
湯気の中にいるような状態で、ドライサウナ以上に
猛烈な汗が吹き出します。 入っていられる時間も5~10分程度。
室温はドライより全然低温ですが、汗は2倍くらい出てくる印象。
脱線気味ですが、温度と湿度の関係はご理解いただけたでしょう。
冷風扇は加湿器である
さて、
冷風扇は、ファンで風を内部の水を含んだフィルターに当てて、
水が気化することで、冷風にします。
もうすでにお分かりのように、顕熱は下がった分だけ、潜熱が増えている。
差し引きで、下がった温度計ほどには体感で涼しくない。
商品説明では「10℃以上冷たい風が出てくる」とありますが、
それは室内が湿度40%程度に乾燥している時の話しで、
梅雨時の70%くらいの多湿の際には、気化量が減るので、
送風温度が下がらない。
部屋全体の湿度は上がり、蒸し蒸し感は解消されないどころか加速する。
原理としたら「気化式の加湿器」とまったく同じ製品だから、
当然の結果です。
加湿器の風を浴びて涼むよりも、
素直に扇風機やサーキュレーター方がよっぽど涼しい。
なぜならば、フィルターではなく、
送風で体からの気化熱で、体が直接冷えるから。
ひょっとして冷風扇は、極端に乾燥した中東など向けの商品ではないのか?
砂漠ならば重宝されることであろう。
でも、高温多湿の日本には向かない。
夏は菌の繁殖に注意すべき
もう一つ衛生面で心配なことがあります。
気化式の場合は、フィルターと水のたまる場所の清掃しっかりしていないと、
レジオネラ属菌が増殖するおそれがあるので要注意です。
強い送風により、エアロゾルになり、肺炎になるケースも起こってます。
また、水道水のカルキがフィルターに目詰まりさせるので、ある意味消耗品の家電です。
2~3年持てば良いレベルと考えます。
日本に溢れるニセ科学
送風機は、こういった科学的知識のないご老人に
「エアコンと同じような働きがあるもの」と誤認させて、
販売しているようです。
冬になると、遠赤外線電気ストーブが売られるように、
今年の夏は、冷風扇がやたらと広告が多いです。
売る側は分かって売っているのか、科学的なリテラシーが低いのか?
日本には こうした ニセ科学的な商品に溢れていることは、かつて 私のブログにて記事にしました。
残念なことに、住宅分野でも多々あります。
おススメの冷房方法
冷風扇は、もろもろの問題があって、購入はお勧めしません。
メインはもちろんエアコンによる冷房です。
体感の個人差の解消と、温度ムラの解消には、
扇風機・サーキュレーターを補助で使いましょう。
扇風機はファンが大きいので、当たる風が優しく、音が小さいというメリットがあるので、首振りで人間に風を当てて涼む用途が向きます。
サーキュレーターは、風の直進性が強い特徴があります。
オガスタ新潟の事務所では、40坪以上の空間を、1台のACで冷房しているので、
温度ムラ解消のために、アイリスオオヤマのサーキュレーターを購入しました。
高性能住宅の大空間には、サーキュレーターは相性が良く、おススメできます。