築55年の丁寧に作られた木造住宅の状態
先日 某所にて リノベーションが可能かどうかの家屋調査を調査をしました。
おじい様が 若かりし頃、遠くから腕の良い大工をひっぱってきて、
かなり美意識の高いおばあ様が、いろいろ注文を出して建築された。
当初は平屋で建てられたが、その後、新潟地震を契機に内壁の手直しと、2階建てへと増築され、現代に至る住宅。
近代数奇屋の影響を受けていると思われる、宮大工のセンスは、柱の細さや仕上げ、建具の意匠にも感じられ、構えの雰囲気もよく、庭の管理もきちんとされている。
おばあ様が、信州の工房まで和紙を漉いてもらい、張替えをしているあたり、並々ならぬ愛情を感じるのだ。
愛着も感じられない、価値の無いただ古い家であれば、私は遠慮もしないで
「建替えた方がいい」というのですが、この家は魅力がある家です。
杉の浮造りの板を用いた玄関収納のしつらえも 侘びと粋がありまする。
浮かせている処理と 素材などは、当時20代だった おばあ様が指示をしたそうな。
若いのに渋い趣味だったんですね。
屋根の安田瓦はロングライフ
瓦も、時間とともに釉薬の変化が詫びてきて、なんとも味わい深くなってきている。
屋根下地のコバあたりが 腐ってきているのだろう。緩やかに波打ってきており、下地の更新を含めて、屋根の葺き替えのタイミングである。
可能であれば、載せ換えたいが 新しい材料も加えねばならぬ。
古い材料と新しい材料が混じると風合いで違和感が出ないだろうか?特に 棟瓦がむずかしいのか?
などと考えていて、ふとお隣の家の屋根を見ると、コロニアルだ。
やっぱり 新潟の風雪に耐えられないんだな。
それも たかだか 10数年前に載せ変えて、さらに、昨年全面お化粧で 塗り替えたばかりだそうだが、すでに ここまで塗装が剥げている。
新潟で採用してはいけない建材の代表格。 だめだめ新建材の筆頭ですね。
外部に用いた木材もロングライフ
庇もがんばっている。
完全に 古色色ではあるが、まだまだ数十年はいきそうな様子。これだけの細いモチオクリで桁を受けて、シンプルに杉の板を載せて、上に板金を巻いただけ。
雪なども載っただろうが、この程度でも持つんですね。
杉の板も そうとうにくたびれてはいるが、現役。 さすが 木舟でも使う材料。
まだ1次防水層として機能している。
横張りの下見板だと このように波打つわけで、これがおもしろいといえばおもしろい。
越後的な景観を形成していたスタンダードな処理。
塗装は弁柄系と思われるが、うっすら当時のまま板を彩っている。
さすが 弁柄 耐光性&耐熱性が 優れている。
腐朽菌の繁殖も防ぐ働きをしたのだろう。55年もそのままほったらかしでこの状態。
現代の住宅の80%で使われている窯業サイディングならば 20年で朽ちていただろうに。
お隣の屋根の例もあるが、死ぬまでのメンテナンス費用はどれくらい違ってくるんでしょうね。 たまったもんじゃないです。
オーガニックスタジオ新潟の外部仕上げについて、
「建てた人が死ぬまでほったらかし」と よくわたしは表現しますが、
誇大表現ではない。 その証拠として見て頂きたかった。
杉板外壁の防水性
(杉の外壁は 耐火性&防水性という基本性能はどうなんだ?との読者の疑問が寄せられましたのでこの場を借りてご解説します)
我々も 近ごろ、杉の板を希望される人が多くなったのでご説明します。
サイディングにしろ何にしろ、1次防水層である外壁材は、大雨の際には裏側に水が周る前提で施工されてます。2次防水層としてのタイベックと防水テープによる処理。3次防水層の耐力面材(ダイライトなど)により、防水面性能が維持されてます。
杉板外壁の防火性
防火認定を受けているダイライトやモイスという耐力面材で、耐火性能は決まります。
防火認定というのは、30分間、炎にさらされていても引火しないということ。
一般的な22条防火地域であれば、普通に 軒裏現しのオガスタ仕様で建築可能だし、
準防火地域では、 軒裏や換気ダンパー、窓を防火窓に変えるなどの(網入りガラスにするなど)の仕様を変更する必要はありますが、外壁は そのままで対応となります。