未だかつてない夏の除湿に成功したことで、建築の一部の人間たちで話題騒然になっている、ラファ・エコシステム。
栃木の工務店の、Raphael設計 株式会社(ラファエル)の神長さんと、栃木のオーガニックスタジオの田中さんの2件の業者向け見学会に行ってきました。
神長さんのところでは、2回にわたって開催されて、延べ何十人もの断熱に関心があるそうそうたる面々が全国から集結した。1回目に東大の前先生と松尾和也さんが訪れ、
「かつてないほどの除湿ができているが、どういう理屈かわからない」
と、言ったとか言わなかったとか。
概念図はNET公開はされていたが、現物を見ないことには私もよくわからない。
ならばと車を飛ばして見に行くことにしました。
興味があると、山田君と刈谷君も同行しました。
近隣の駅で、あすなろの関尾くんと、飯塚さんと合流して、ひとまずは有名なおいしいと有名な佐野ラーメンを堪能してエネルギーは満タンです。
喜多方ラーメンに似たスープと平打ち麺がおいしかったです。
ラファエルさんの物件の情報は、Facebookで多くの方が情報公開し溢れているので
もう一つ、同時開催された栃木のオーガニックスタジオの田中さんの現場の写真を中心にアップします。
ご存知ない方のために、栃木のオガスタについてご説明を。
オガスタ新潟の創業時、これ以上良い名前が思いつかなかったので、田中さんにお願いして使わせていただいている。 歴史的にはオガスタ新潟の兄貴分が田中さんのオガスタです。
同行のスタッフ2名は、田中さんの建築を見るのは初めて。
「細かな建築的な愛があちらこちらにある」と非常に感銘を受けておりました。
「ラファ・エコシステム」は、神長さんと田中さんの2人でやりとりしながら誕生し、検証しながら進化してきたようです。
このシステムには、大きな特徴は3つあります。
(ここから先はオガスタ会員登録した方だけの限定公開です)
① 1階床が土台から、かさ上げされ高くなっている
田中さんがかつて、床下エアコン暖房を計画した際に、基礎の立ち上がりが邪魔で、
うまく空気が流れない。そこで、土台からさらに断熱ダクトが通れるレベルまでフロアレベルを上げて、土台の上を自由に空気が動くようにした。
それにより床下空間が広くなり、点検がしやすくなったことと、ダクトの取り回しが可能になった。 フロアレベルが高いために、玄関へはデッキインで入るようにしていた。
デメリットとしては、意匠系の人からすると、プロポーションが高くなるので、BOXの形状には向いている。それと、庭へのつながりがフラットにならないが、グランドピアノのある家のように、ひな壇で繋がる必要が出ることだろう。
② エアコンBOXで SAとリターンをエアコンに吸わせている。
床下エアコンを丸ごと囲ってしまうエアコンボックスを作り、一種換気のSAと、階間をチャンバーとして、2階の各室から送風ファンで冷暖房のリターンを引っ張り、
両者をエアコンに吸わせて冷房している。
この二つと、ACの送風力とか統合され、2階への空気が運ばれている。
(ΣSAとでも表現されていた)
1種全熱交換換気は、EAにOAの湿度を移し替えようとして、2/3程度の水蒸気は3種換気より室内に入ってこないとされているが、それでもSAは内外の水蒸気の差の1/3は室内にもたらされる。 仮に屋外が23g㎥で、室内が11g㎥であるならば、3種なら12g、1種でも4gはということ。詳しい計算は省くが 10L程度の加湿要因となっていた。
それを強制的にACで冷房することで搾り取る。
未だかつてない現象は、これに要因があると思われる。
ただし、今までも1種換気のSAを、ダクトエアコンに直結して全館空調するケースはされていたわけで、原理的には同じ効果があり、除湿されていたのだろうが、徹底比較検証がされていないので、エキスパートな方々の今後の情報が注目されます。
このシステムは、ダクトACを用いたシステムを、一般の壁掛けACと、単純な循環ファンを用いて、造作したものとも考えられる。
③ 階間をリターンのチャンバーとして用いること
循環ファンでACBOXに送り込みエアコンに吸わせている。
ラファ・エコシステムでは、エアコンのリターンを重視している。階間は気流止めがされて、2階の各室の床と、1階の天井にある「穴」から確実に、それなりの空気量で引っ張られる。1階・2階の階間をリターンのチャンバーボックスとして用いているので、ダクトもかなり省略されている。
今までの発想だと送風で「押す」ように計画されることが多かったが、それだと隅々まで空気が及ばず、滞留が起こる。
じわりと確実に空気を行きわたらせるには「引く」ことが重要だという。
従来でも2階ホールで設置したエアコン冷房が、個室を締め切るとホールと個室で温度差が出るけどどうしますか? みたいな課題があったわけです。
そこで小屋裏エアコンで解決した流派もあれば、循環ファンを各室に設け、ホールと対流させた流派もある。オープンスペースや引き戸により、開けておけばいいという流派もあったが、それとは別の流派の登場ということもできる。
実際アンダーカットからは冷房に十分な気流があることが確認できた。
それにより室内空気が確実に、ACまでリターンし、冷房で除湿される。
以上が3つの特徴ですが、②③の要因により、
確実な除湿が成り立っていると私は理解しました。
神長氏が力説していたのは、これを実現するための前提は、満足できる高断熱な躯体であることということ。
さらには冬でも無暖房でもどこまで室温が上昇するか。
新住協で長い時間をかけて蓄積されてきたノウハウを、忠実に実践するのとが、大前提であるといっていた。
田中さんの事例でも、神長さんの事例と3つの原則は同じ。
田中さんの場合は、ACBOXからの断熱ダクトが安全寄りに5本も設けられ、簡単なベニアのスライドで開け閉めし、風量調整ができるようにしてあった。
この「ラファ・エコシステム」
見学したそれぞれは、よい刺激と知識を得て帰ったことだろう。
私たちの今までのシステムも部分改善として様々な参考になるポイントがありました。
お二人ともご丁寧にご説明と貴重な現場を見せていただきまして誠にありがとうございました。