気密性能と隙間風の関係
高断熱高気密の技術は、北海道で生まれて育ってきた。
性能が低いと建物の中の空気が外の空気と入れ替わる、
いわゆる「すきま風」が生じて熱損失を大きくする。
この熱損失は、建物の断熱性能をもとにした、
熱損失シミュレーションには現れない。
そこで、様々な研究機関では、気密性能がどの程度であれば、
隙間風が起こらないか、古くから調査研究が進められてきて、
答えはかなり以前から導かれ、定説となっている。
*北欧住宅研究所川本清司所長作成データを一部編集
建物の中の空気が漏れてしまう理由には2つある。
1つ目には「内外の温度差」によるもの。
隙間が多ければ、建物の上のほうに暖かい空気が、建物から逃げようとする。
逃げた分だけ冷気が入り込み、室内の空気が入れ替わる。
密閉性がC値1.0よりも良い性能であれば、外気温が氷点下になろうとも、家の空気が逃げていく事は無い。
これを根拠として、高気密住宅の定義としての要求性能をC値1.0以下とするようだ。
2つ目は、「建物に当たる風」
建物に当たる風により、建物の空気が入れ替わろうとする。比較的強めの風が吹いた状態だと、C値 1.0だと、0.2回転ほど空気が入れ替わろうとする。
計画換気の回転数が0.5回転としているので、風により影響があるということになる。
それにより、C値は0.7よりも性能を上げることが理想だとされてきた。
しかし、実際に建物の周辺に家屋が立ち並んでいるのか、
野原にぽつんと立っているのかによって状況が異なってくる。
住宅密集地だと風の影響が少なくなる。
C値0.36まで気密性能が高まれば、強い風の影響でも、空気が入れ替わることがない。
逆に言えば、これ以上性能をあげたとしても、建物の燃費に影響を与える事は無い。
断熱工法や省エネエネルギーの分野での研究は、新住協・北総研・HEAT20などの研究団体にて、数十年にわたり研究されてきて、今回と同様の共通した結論を出している。
どの団体も、現実的に意味のなくなってしまうスペックの高性能を求めるべきだとの考えを示してはいない。
このような建築物理の知識のない一般ユーザーにおいて、
「C値が良い家が、良い家だ」「C値0.0を求める」という極論も聞かれますが、
それは自己肯定の情念というべきで、建築工学的にはそれは事実ではないです。なぜ必要なのかその根拠に乏しいです。
高気密性能を極めれば、より換気がうまく行くとの理由も聞かれますが、それも事実ではなく、0.5以下であればその差は無いでしょう。
厳密にはより正しく動くでしょうが、それよりも空調の機種選定や運用のほうが、重要性と優位性があることでしょう。
超高気密にする有用性として唯一あげるならば、気密性能をなしえた大工さんを褒めたたえて、モチベーションを上げるための物差しとしての働きでしょう。
住んでいる人には実質的には変わりはありません。
それよりも、多大な労力をどうでも良い分野に注力し、時間とコストをかけるよりも、その労力を別の領域に注ぎ込んだ方が良い結果になります。
(とは、新住協代表の 鎌田氏の見解で、私も同意見です)
そこで大事なのは
シンプルでコストダウンされた、合理的な断熱工法を選ぶこと。
均一な建築品質:
特別な技術を必要とせず、安定して良好な気密性能を達成できるということは、工法の再現性や均一性が高いということを意味します。
これにより、消費者は安心して住宅を購入できるとともに、建築会社や工務店も品質保証を容易にすることができます。
コストパフォーマンス:
特別な技術や追加のコストをかけずに 良好な気密性を持つ住宅を提供できるということは、消費者にとっては高いコストパフォーマンスを持つ住宅として評価されるでしょう。
これがまさに新住協で改良を長年行い、完成の領域まで高められた、
「新在来工法」ということになります。
マニュアル手順通りに施行すれば、安定してC値で0.3程度の性能が出せる。
そのことが最も重要なことです。