木材の乾燥方法で、天然乾燥の木材を使わない理由

自然素材
admin

読者の質問に答える形式で、「木材の乾燥方法」について解説します。

オガスタの構造材はどのような乾燥方法のものなのか?

どのような乾燥材を使われているのでしょうか?

私から見ると、自然素材を大切にするオガスタさんだと、天然乾燥か低温乾燥あたりが似合っていると思います。

全国のスーパー工務店でも、そのへんに拘っている所は少ないようですが、なぜ殆どの工務店は、高温乾燥材を使ってしまうのでしょうか?

高温乾燥だと水分ばかりでなく樹脂成分まで抜けて、様々なデメリットが出てしまう一方、
天然や価温だと強度、耐久性、防虫性、芳香性、自然な色合いなどメリットが数多いはず。

(半世紀前の私の実家もそうでしたが)
昔は新築住宅に入るとさわやかな杉や檜の香りがしましたが、最近は新築見学会に行っても
木材の饐えた匂いの家が多いです。

やはり、経済性と工業的な規格性が、最優先ということでしょうか?

60-70年の星霜を経て育った樹々なのですから、その後たった2年くらいなので寝かせてやって、
その真価を発揮させてやれればなあと・個人的にはそう思います。

人工乾燥方式でもいろいろなやり方が

私どもの構造材のは、原木から、乾燥、製材までのプロセスも一貫して処理されている、大規模なプレカット工場で製造されたものを用いてます。
近頃の最新のプラントでは、高温蒸気式減圧乾燥機採用されていることがほとんどです。

*写真:山長木材さんより

かつての高温乾燥は「高温多湿」で、ただ単に熱を加えて乾燥させる方式で、2日の短期間で終えるメリットがありますが、ご指摘のように木酢液のような香りになり、内部割れのリスクもあります。

最新の方式である、高温蒸気式減圧乾燥機を用いると減圧乾燥により「高温少湿」となり、1週間程度の時間をかけてゆっくり乾燥させることで、上記のデメリットを防げます。

懸念されてる樹脂成分の抜けていくことも、ある程度抑えられ、香りは天然乾燥には劣ると思いますが、我々の施工実績の写真でも確認できるように、天乾と遜色ない、自然な艶の木材になります。

質問に「低温人工乾燥方式」についてありましたが、この方式は人工と天然の中間の性質で、乾燥工程が8~10週間もかかるようで、ストックヤードの関係で、あまり目にすることがありません。

いちばん大事なことはしっかり乾燥させること

構造木材で、最も大事なのは、しっかりと乾燥させられるかどうかということです。

含水率を中心部まで20%以下にできるかどうかがポイントです。

ここまで行けば、季節の水蒸気に応じて含水率が上下する幅 (気乾均衡含水率)
とほぼ同等の乾燥具合なので、木材の変形や、割れなどの問題も生じにくいわけです。

寸法が変形すると、内装のひび割れの原因になり、建物の気密に影響を与えてくる。
なので、構造材で乾燥材を使う事は必須条件であると言って良いでしょう。

天然乾燥では、表面が気乾均衡まで乾くのが限界で、人工乾燥だとそれ以下に、深部まで乾燥できることから、より確実に乾燥させることができるメリットがあります。

ついでながら、「天然乾燥」は乾燥温度が低いので、潜む虫やカビを殺せないために、防虫・防カビの観点ではデメリットになっていて、在庫の管理に気をつけねばなりません。

天然乾燥材を使えない理由

しかし、天然乾燥材を採用できない1番の理由は、ストックヤードの問題です。

問題の無くなるとされる乾燥期間の2年間を、木材を積んでストックするためには、広大なヤードが必要です。
例えば、天然乾燥をウリにしているエコワークスさんのケースだと、野球場数個分もの、自社グループ専門のストックヤードをキープしています。
九州の山は比較的なだらかで、土地も極めて安価に入手できます。そして日本有数の木材供給エリアです。木材生産の本場の九州ならではの取り組みです。

天然乾燥は乾燥させるための燃料コストが削減できるため、結果的に安く供給できることもできます。もちろん最もサスティナブルな方式で、環境へも地域へも理想的な方式ですし、質問者からあったように、豊かな木の香りはやはり人工乾燥のに比べれば格段に上です。

* エコワークスさんの木材での取り組みは動画で解説してます。

しかし、他の生産地では山は急だし、新潟県のような地域だと積雪もあるので、同じようなヤードを確保する事は物理的に困難です。

天然乾燥材ができないのであれば、プレカット工場の脇にヤードを設けて、1週間程度かけて釜で乾燥させ、回転率を上げる考えが合理的だと言えるのでしょう。

エコの観点で言えば、近年は、製材時に生じるチップを燃料にしていることも普及していて、環境配慮も進んできています。

結論

このように、人工・天然の乾燥方式のどちらが良いとか、理想とか言えず、その地域での木材供給の条件がどのようになってるかどうかが、実は一番の理由と考えていただければと思います。

 

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