4間真四角の総二階に切妻屋根を架けた「月岡の家B」では螺旋階段を採用しています。螺旋階段を木でつくることは困難なので鉄骨で製作をしています。製作の工程をみるために何度か工場に足を運びました。
踏板の部材。
支柱は鋼管で作りました。
一口に階段といっても形状によっていくつか種類がありますのでまとめてみようと思います。
階段の種類
直進階段
まっすぐな階段で省スペースで上下階をつなぐことができます。踏み外してしまうと真っ逆さまにドドドッと落ちてしまいます。僕も幼い頃に何度か落ちました。不思議なものでケガはしませんでした。
矩折れ階段
登り口もしくは降り口のいずれかに方向転換のための踊り場を用意した階段。踊り場があるので真っ逆さまに落ちる心配はわずかながら軽減するのでしょうか。
折り返し階段(廻り階段)
登り口と降り口はまっすぐ、踊り場の部分で180°方向転換をして昇降する階段。
1坪分の面積をとるので階段下のスペースを洗面台や、トイレに利用しデッドスペースとならないような計画をします。
廻り階段を螺旋階段と間違って認識されている方も多いです。
我が家もこの廻り階段ですが、廻り部分の外周の角!ここってデッドスペースなんですよね。
螺旋階段
これはわかりやすいですね。終始回りっぱなしの階段です。階段の中でももっとも意匠性が高く空間に溶け込みます。中心側は踏むスペースが狭くなりますが、外周はひろく昇降がしやすいです。
鉄骨螺旋階段のメリット
あらためて鉄骨階段の制作風景を眺めてみると様々なメリットがあることに気づきました。
工期の短縮
階段を木工事とした場合、難易度にもよりますが大工さんがつきっきりで4~6日かかることが多いようです。鉄骨階段は大工さんの手を煩わせることなく別ラインで作業が進んでいきますので工期の短縮、大工の省力化につながります。
工事中の安全な昇降設備
螺旋階段の重量は約300kgを超えるため人力で立て込むことは難しいです、さらに搬入ルートの問題があるので建物が骨組の段階でないと据付ができません。
つまり上棟のタイミングで揚重機を利用するのがベスト。
最も危険で事故の多い、上棟の段階ですでに本設の階段ができてしまうということは工事の安全面で大きなメリットといえそうです。
意匠性と視覚のひろがり
螺旋階段が描く三次曲線の美しさ、鉄骨ならではの部材の軽やかさから意匠性がとても高いです。設置のための壁を必要としないため視覚的な広がりも確保できます。
間取りの自由度
間取りを考えるうえで階段にはいつも頭を悩ませます。廻り階段、直進階段。基本的にはどれも壁が必要です。螺旋階段は壁に接して設ける必要がないので空間のどこにでもプロットできます。廻り階段で生じてしまうデッドスペースもありません。階段自体を見え隠れのための仕掛けとして利用することもできます。
鉄骨螺旋階段のデメリット
コストの問題
コストが高い。普通の階段の倍はみておかなければなりません。
大型家具の搬入が難しくなる。
2階の間取りにもよりますが寝室のベッド、子供室の勉強机、水廻りがある場合は洗濯機などの搬入がネックになります。二階に掃出し窓を設けるなど搬入口を確保しておいたほうがよいでしょう。
工事段取りの工夫が必要
石膏ボードなど板状の大きな資材は上棟時にレッカーを使って上げておいたほうがよいです。また資材搬入用として二階の床を一部開けたままにしておく必要があるでしょう。二階にお風呂があるケースだとお風呂設置までの間はその穴を利用して資材を上げることができそうです。
踏むスペースの広さが不均一
階段の踏むスペースが中心は狭く、外周部にむかって広くなります。
中心部よりをあるくと踏み外す恐れがあります。手摺を外周側につけて安全な昇降をサポートしたいです。