道標の家「水道町の家」
設計:ma ヤマシタマコト 監督:小林 秀昭 棟梁:遠藤勇一
- コンセプト
- 新潟島の、日本海沿いに伸びる市道を北へ進むと三叉路にぶつかる。左へ進むと護国神社、右へ行くと新潟大学病院。
この三叉路に、立派な門を構えた大きな住宅があった。本計画はこの住宅の建て替えである。
分岐点に建つ建物は、自ずと道しるべとしての役割を担うことになる。
わたしも普段からよくこの道を使っており、大きな門とそれに覆いかぶさるような松の木は、いつもそれとなく横目に見ていた。
ここに建て替えられる新しい家にも当然、新たなランドマークとしての役割が与えられる。
この場所に置かれるべき新しい道しるべとはいったいどのようなものだろうか。そんなことを考えながら設計を進めた。
また敷地の西隣りは施主のご実家であるため、そのあいだを共用の庭として、両者の関係性、とくにお互いの窓からの見え方にも留意した。
- 外観
- 母屋は杉板で覆われたほぼ正方形平面を持つ総二階の四角い箱に、大きな切妻屋根を架けた明快な構成としている。その手前には新しい門として三枚のコンクリート壁を立ち上げて屋根を架け、住宅へのアプローチの入り口、それに車庫の機能をもたせている。
車庫の手前にも植栽を設けて前庭とし、この緑と木塀、コンクリート塀、中庭の緑、住宅の杉板と、層状に重なる構成がこの地の新しいランドマークとなるのではと考えた。
南側の道路はバス通りで、また近隣に高等学校があり学生も多く通るため、圧迫感の出ないよう留意しながら適度に木とコンクリートを使い分けて塀で囲み、視線をコントロールしている。
- 内観
- 主室の南西の角は吹き抜けのある食堂で、大きな木製サッシのコーナー窓と縁側が設えられており、庭と繋がる明るい動的な空間となっている。このコーナー窓には断熱ハニカムブラインドと簾戸が用意されており、視線の操作が可能となっている。吹き抜けを見上げると、二階の書斎や学習用のカウンターのあるホールとつながっている。
主室を奥へ進むほど天井は下がり、ソファの置かれる居間部分は2250mm、いちばん奥の小上がりでは1930mmで、段階的に囲まれ感(おこもり感?)が強くなる。
一階の中心には深いカウンターを有したアイランド式のキッチンが据えられ、アクセスが良く、また一階全てを見渡せる。
室内の壁・天井は塗り壁として、大開口から取り入れた光が家の奥にまで柔らかくまわりこむ。
- 規模・構造
- 一階床面積 79.64㎡(24.09坪)
二階床面積 64.59㎡(19.54坪)
車庫面積 20.95㎡
木造在来工法 2階建
- 性能
- 耐震等級 2以上
Q値 :0.90 [W/m2K]
Ua値:0.32 [W/m2K]
暖房負荷:26.3 [kWh/m2]
冷房負荷:13.3 [kWh/m2]
空調計画:床下エアコン+ホールエアコン