借景の大開口FIX「新和の家B」
設計 ma ヤマシタマコト
監督 小林秀昭
- 設計コンセプト
- 敷地は新潟市中央区新和の住宅地にある。
北側に面した道路は幅員4Mと狭く、また袋小路になっているため通過交通はなく、静かな環境が守られている。
敷地の南側には二階建ての住宅が境界近くまで迫っていて、充分な日射や眺望は望めない。唯一ひらけているのは東の隣家の庭で、敷地から見て東南の角に色濃い緑が重層していた。
そこで、建物をあえて南西側に寄せて、この隣家の緑を頼りにして暮らす家を計画した。
建て主からは、プロジェクタによる大画面映像を楽しむための大きな空間、建具がほとんどなく緩やかにつながる各部屋、建築と一体となったカーポートが求められた。
- 外観
- この住宅は三つの要素から成り立っている。
ひとつめはアプローチを兼ねたカーポートで、この家の外観を構成する一部としての役割を果たす。カーポートの奥には外物置が用意され、通りから東庭への視線を適度に遮っている。
ふたつめは道路に面した総二階の部分で、一階は玄関と階段、厨房・水回り、二階は寝室と仕事部屋、納戸で構成される。
みっつめは下屋となっている主室部分で、道路からはいちばん奥に配され、正面からはほとんど見えない。このブロックは主室の大きな空間を確保するために、桁高さを45cm 高くしている。
外壁は杉板の縦張り押縁で、通りに対しては寡黙な表情とした。二階の北東の角には長めのコーナー窓を設けており、この家を印象付けている。
- 内観
- 主室の東面には隣家の緑を取り込むため、いっぱいに開口が開けられている。
はめ殺しのペアガラスは幅・高さともに約2Mで、ほぼ最大製作寸法である。一枚で100kgを超えるガラスを大勢の手を借りて建て込んだ。
この開口の上部の幕板には、断熱ブラインドとプロジェクター用の電動スクリーン、照明が仕込まれている。
南面の壁には横長の地窓を設け、ささやかながら作り込まれた南庭の低木や下草を楽しむことができる。
また南側の隣家と隣家の隙間を狙って縦長の開口を設け、わずかに見える南の空を切り取っている。
一階はトイレと脱衣室以外には建具がなく、玄関から主室、厨房、納戸を通る大きな回遊動線を作っている。
二階には建具はなく、それぞれのゾーンに必要なしつらえを用意している。
また一階と二階はグレーチング床で緩やかに繋がり、光や空気の流れを上下階で共有する。
- 庭
- 隣家とのあいだのコンクリートブロック境界塀は、建て主とその仲間の手により漆喰で白く塗られた。これによって窓からの景色が引締まったように思う。
主室の東側の庭は、隣家の庭の緑を頼りにしながら、それに添えるような近景の緑となるよう最小限の植栽を植えた。
南側の庭は、地窓から楽しむために、低木や下草による重心の低い植栽計画とした。
- 構造・規模
- 構造 / 木造在来工法 2階建
一階床面積 (住宅部分) 65.83㎡ (19.91坪)
(車庫部分) 22.77㎡ ( 6.88坪)
二階床面積 39.75㎡ (12.02坪)
延べ床面積 (住宅部分) 105.58㎡ (31.93坪)
(車庫含む) 128.35㎡ (38.83坪)
- 空調計画・性能
- 主室に暖房用として床下エアコンを一台、二階のオープンスペースに冷房用として壁掛けエアコンを一台設置し、この二台で運用する。
二階エアコンの正面の床はグレーチング敷きで、冷気が下階にも落ちていく仕掛けとなっている。
Q値:1.06 [W/m2K]
Ua値:0.31 [W/m2K]
暖房負荷:27.5 [kWh/m2]
冷房負荷:10.3 [kWh/m2]
(QPexによる計算)