もうひとつの選択肢「米山の木のマンションリノベ」
設計:ma ヤマシタマコト 監督:山田 剛 棟梁:佐久間大工
- コンセプト
- 新潟駅周辺で戸建て住宅に住むというのは、実際にこのエリアに土地を持っているということでもなければ現実的には難しい。
しかしここに、中古マンションをリノベーションして木の家のようにして住まう、という新しい選択肢を提示する。
計画時において築24年の15階建てマンションの10階の一室。
新潟駅南口まで徒歩数分という好立地。利便性はもちろん、眺めも良い。
既存の物件は、小さな玄関から狭く暗い中廊下が伸び、その左右にふたつの個室、水周り、クローゼットなどが配され、廊下の先はリビングダイニングとそれに隣接した和室、そして対面式のキッチンと、いわゆる典型的なマンションプランだった。
このマンションの一室を、縦配管のみを残し全ての間仕切り・内装を撤去して、木質感があふれ、風が吹き抜ける暮らしを創り出す。
- 計画概要
- 平面計画をするにあたり、重要視したのは通風と回遊である。
地上から30m近い高さにあるため、常に風を受けるのにも関わらず、一般的なマンションプランでは風の抜け道がほとんどないため、その恩恵を受けることがない。
そこで通風を邪魔する壁できるだけ取り除き、どうしても壁が必要な部分には開口を設けた。
具体的には、壁ではなく家具や建具で部屋を仕切り、その際に家具の背板を省いたり、建具上部に欄間を設けて風の抜け道を確保した。
また浴室の壁には通風のための小窓を設けた。
おかげで少し窓を開けておくだけで心地よい風が吹き抜ける家となった。
また広さが限られているマンションにおいて、行き止まりを排して回遊性を持たせることは、利便性を向上させるだけでなく、狭さを感じにくくさせる効果があるように思う。
主室は半分を畳敷き、もう半分を働き巾190のオークのフローリングとして、異なる寛ぎ方ができるようにした。
天井は栂の小巾板、壁は珪藻土系左官材料で仕上げている。とても落ち着く空間になったと思う。
ベランダの窓に用意された障子戸を閉めると、ここがマンションの高層階の一室であることをすっかり忘れてしまう。
料理好きな施主のために用意された造作キッチンはマンションとは思えない充実した機能と広さ、収納量を持つ。
玄関は収納を合わせると4帖ほどのゆったりとしたスペース。床の仕上げは洗い出しの三和土。
廊下は狭い部分でも巾950を確保し、本棚や収納を設けてただの通路とならないようにしている。
はじめて本格的なマンションのリノベーションに取り組んだ。
マンション特有の天井高さや広さの制限、構造的な課題があり、それらをどう処理していくのか、多くの先達の事例や教訓を参考にさせていただいた。
また施工上の制約(音の問題や工事可能な時間帯、養生、トイレ、水、工事車両の駐車スペース確保など)があり、現場監督、大工をはじめ各職人の皆様にはいつもよりもましてご苦労を強いたことと思う。
みなさまに感謝致します。
- 断熱
- 外周部の壁及び床面には押出発泡ポリスチレンの断熱材を50mm貼った。
またマンションの場合、外部に面する窓やドアは交換することはできないため、樹脂製もしくは木製の内窓をつけて断熱性能の向上を図った。
- 規模・構造
- 鉄骨鉄筋コンクリート造 15階建マンションの10階
床面積 75.90㎡